京都の中央卸売市場内は喫茶店やラーメン屋、定食屋にうどん屋など、市場で働く多くの人の胃袋を満たすためのお店がぎょうさんあります
僕は家業を手伝い始めた25歳頃より30年、市場開場日には毎日行ってるんですが、実はこれらの飲食店を一度も利用した事がありませんでした
というのは、我々買い出し人は、商品を仕入れたら言っとくも早く店に帰って商品を店頭に並べないといけないので、飲食店でのんびりしてる暇は無いんですよね
という訳で、今後も市場内の飲食店を利用する事は生涯無いだろう、と思ってたんですが、この日はたまたま
・朝早く目が覚めた
・道路が空いてた
ので市場に30分ほど早く着いてしまい、買い物も済ませたけど帰る時間にはまだ早い、というのは前日に注文してた分の納品は仕入先が私が市場にいる時間を把握しててその時間に私の車に納品に来るので、早く帰ってしまうと商品を受け取る事が出来ないんですね
このタイミングなら、というか、今後もこのような時間が取れる事もそうそう無いだろうし、と意を決して毎日前を通って気になってた伊勢屋さんに行ってきました
伊勢屋さんは市場の仲買いが入ってる建物とは別棟の、包丁やさんとか資材屋さんとか刺身のツマの大根のケンの専門店とか、魚屋や料理屋がよく利用するものを売ってる商店が並ぶ一角にあります
伊勢屋さんの店内は四人掛けのテーブルが5つ、こじんまりとした店内です。
行った時間が8時30分頃とまだ仲買人が忙しく働いてる時間帯なのか、おじいさんが一人で切り盛りしてはりました、いわゆるワンオペですね
僕が入店した時はお客は誰もいませんでしたが、すぐに一人、そしてまた一人と来客が
ん?なんか視線を感じる
最後に入ってきた人を見ると近所の居酒屋の大将でした
軽く挨拶をしたんですが、なんだか気恥ずかしく
というのは冒頭にも書いたように、仕入れをしたらすぐに帰って品物を並べる、が商売人の常なのに、のんびりご飯を食べてる所を見られたら
「藤村屋はヒマなんか?」
と思われるかもしれないと思ったからです😅
そんな大層なと思われるかもですが、商売って案外そういう所が大切なんです
ヒマな店、売れてない店で買い物したいってお客様などおられませんし
あーほんと悪い事はできませんなぁ
決して悪い事では無いとは思うのですが、亡くなったお爺ちゃんも親父も市場でご飯を食べた事など無かったでしょうから、正直罪悪感を感じずにはいられません
メニューを見ると低価格帯の店屋物やさんに分類されるもので1,000円を超えるものがありません。
物価が急上昇してる昨今、ほんまに有難い事です
ちなみに注文した親子丼は700円でした
ワンオペにもかかわらず、というか僕以前にお客様がいなかったので、五分ほどで親子丼が配膳されました
親子丼、タクアン、しば漬けです
一口目を頂くと見える、第二階層(そういう表現が正しいのかはわかりませんが)に、おつゆがしっかり浸かってます
これはめちゃくちゃツユダクな親子丼です
ツユダク過ぎてご飯は箸で掴む事が出来ません
味付けが少し甘めな事も相まって、茶づけを食べるかの如く、ズルズルと流し込みです
「親子丼は飲み物です」
そんな言葉が頭をよぎるほど、あっという間にたいらげてしまいました
ほぼ噛まずに、ですから、ものすごく早く食べられます
胃にはとても悪いでしょうけど😅
食べ終わってほっこりしていると、私の次に入ってきたお客さんに注文してはったうどんが届きました。
あっ、テーブルの上に千円札が
うどんを配膳した大将がそのまま千円札を持って行き、すぐにお釣りを返しにきはりました
横のテーブルに座ってる近所の居酒屋の大将を見ると、こちらにもテーブルにお金を置いてはります
なるほど、伊勢屋さんはこういうシステムでしたか、食べ終わってから帳場へ支払いに行くんでは無いんですね。
そらワンオペでやってはったら、次のどんぶりをこさえてはる手を止めて会計せんとあきませんもんね
お客さんを待たせる事にもなるでしょうし、これは市場で働いてる忙しい人たちにとって良いシステムやなぁと感心しました
そこでハタと気がついたのですが、もしかしたらツユダクの親子丼も少しでも早く食べられるようにという、市場の中の飲食店だからこその完璧に設計された親子丼だったのかもしれません、知らんけど
次のお客さんのうどんが運ばれるまで待って会計を済ませ、初市場内飲食店の支払いルールを覚えた事にちょっと得意になりながら店を後にしました。
伊勢屋さんの最寄駅はJR嵯峨野線の丹波口駅か梅小路京都西駅が最寄り駅です
営業時間がよくわからないのですが、市場内の店ですから早朝からお昼過ぎぐらいまでかと思います
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