地蔵盆

大文字の送り火も済んで、ご先祖さんも気ぃよう冥土へ帰って行かはりました。今年も連れて行かれんとすんでほっとしとります。大文字が済むと、京の町にはなんや秋の気配が遠くに感じられるようになってくんのどす。日中はまだまだ暑いんどすけど、朝夕の風がひいやりとして心地よろしおす。

この頃に京の町中では「地蔵盆」ちゅう催しがあんのどす。これはどんなもんかいなて云うと、京の町内にはそれぞれ、お地蔵さんが祀ったありましてそのお地蔵さんの世話は町内で持ち回りですんのどす。ちなみにうっとこの町内は六地蔵が祀ったあります。なんで地蔵菩薩を祀るのかちゅうと、

これはこの世のことならず 、死出の山路の裾野なる、さいの河原の物語~

で始まる「地蔵和讃」にあるように、小さい子供が死ぬと親不孝者と云われて賽の河原で石を積む罰が与えられんのどす。で、せっかく苦労して積んだ石を夕方になると鬼がやって来て壊してしまうんどす。そのときに地蔵菩薩が現れて衣の下に子供をかくまってくれるちゅうお話どす。つまり、地蔵菩薩は子供達の守り神ちゅうことなんどす。せやから各町内には必ず祀ってあんのどす。

そのお地蔵さんの縁日にあたる8月24日前後に各町内の地藏さんの前や店先・ガレージなんかに縁台をこさえて、子供らは一日中お菓子には不自由せえへんちゅうイベントなんどす。勿論、お寺さんが来てお経をあげたり、大勢で輪になって直径数メートルもある大きな数珠を念仏を唱えながら回していく「数珠回し」とかいった儀式もあんのどす。主役はもちろん子供なんどすけど、大人向けにも福引きやとか盆踊りやとか企画したはるとこもぎょうさんおました。

ただ、昨今の少子化のせいと、子供らがあんまり喜ばへんようになったため段々とこの地蔵盆が下火になってきたんは寂しいことどす。祗園祭みたいに、観光化したビッグイベントとはまた違おて、地域に密着したイベントどすさかいに。うちらの子供のころは一日中そこへ集まってトランプしたり飲んだり食べたりと騒いでたもんどす。で、この地蔵盆が済んだらあわてて夏休みの宿題に追われたもんどした。

あんだけうるさかった蝉の声もいつのまにやら聞こえんようになって、入れ替わるようにすだく虫の音がゆく夏を感じさせて、なんやもの悲しゅうなってきます。舞妓ちゃんの花火やらすすきやらの花簪もお終い。もうじき秋どすなぁ…

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